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アートスペース無可有の郷15周年記念展に3点出品します。油彩から水彩、彫刻、アルミ造形まで多彩な展示です。
喫茶コーナーと素敵な庭もございますのでオフタイムに足を伸ばしてみて下さい。

出品作家:伊勢崎勝人・山家利治・竹内功・古山拓・富山恵美子・山中環・齋藤玄昌實・カルロス・デア

会場:アートスペース無可有の郷

会期:2020年3月19日(木)〜3月30日(月)

            10:30~17:00

住所:宮城県柴田町海老穴海老沢131

電話:0224-56-3584

様々な水彩画のオーダーをいただきます。
直近で描かせていただいたのは、バレエのトゥシューズや赴任地の異国風景、高山植物の花。絵のご注文をいただくたびに「皆さんそれぞれに物語があるんだ」と感じます。(すべてプレゼントのための絵でした。)

半年ほど前、いつも個展に来て下さっている方から「亡くなった妻と登った大雪山の思い出を絵にしてほしい」とのオーダーをいただきました。数ヶ月かけて描き、出来上がった水彩画を先日お客様の元へお届けしました。

オーダーくださったMさんから、「古山さんと奥様をぜひ食事にお招きしたい」と、フレンチレストランにご招待いただき、昨晩おいしく楽しい一夜をすごしてきました。

テーブルではMさんは、「妻からは,良きことをもらいっぱなしでした。でも、早い別れになって、何も返せなかった。だから受け取った恩を、他の人たちに返して行くことにしました。」

実は無くなった奥様は、私の絵の生徒さんでもありました。

絵の制作の筆を置く時=仕上がりの時=はいつも悩みます。「これで完成かな、、、」と思った時、「先生、それでいいよ〜」と奥様の声がどこからか聞こえました。命日の数日前のことでした。

昨晩は4人がけのテーブルにMさんと私と私の妻の3人。
でも間違いなくMさんの亡き奥様も同席していたと思います。

  

話題は変わって、絵の展示で関わっているイベント情報です。

311メモリアル企画『森羅万象のつらなり【海から銀河まで】』が仙台・藤崎本館8階グリーンルームで開催中です。
わたしどもは震災前の三陸風景画展示と絵本「海の見える丘」、画文集「子規と歩いた宮城」原画展で協力しています。

ご近所までお出かけの際は、どうぞお立ち寄りください。

ラストの写真はもう一人のゲスト、牡蠣の養殖家・畠山重篤さんと、イベント主催代表のフリーアナウンサー・渡辺祥子さんです。

リアスの記憶・冬のかもめ_透明水彩

震災前の三陸風景。

リアスの海辺のどの湾に取材したのか、思い出すことができない。

寒かった記憶がある。

白熱灯が灯りはじめた漁村の、暮らしの美しさを描き留めたい、と鉛筆を走らせた。

忘れられないのは、冬の海に響く海鳥たちの鳴声。

 

新型コロナウィルスの影響で、世相が「あれっ?」という方向へ向いてますね。
マスク、消毒液、あろうことかSNSに踊らされてトイレットペーパーや類する紙製品までがあっという間に無く立ってしまったり。

あと10日ほどで東日本大震災から9年目の311がやってきますが、ここ数日のニュースを見ていると、あの時(9年前)のモノが消えたホームセンターやスーパーマーケットで怒声をあげていた大人たちを、なぜか思い出してしまいます。

悲しいのはそんな大人の素顔を、こどもたちが知ってしまうことです。

「そうか、こういうときはだれよりも早く動いて買物した方がいいんだな。店にあるものは全部買ってしまったもん勝ちなんだ。主張しないヤツが損するんだ。」
こどもたちがそんな状況を見て、そう思ったとしても不思議はありません。

未来がさほど長くない、性格も変わらない親や大人はどうでもいい。
だけれど、これから大人に変わって行くこどもたちに、「大人になるとはそういうことだ」と、思ってほしくないと思います。

 

2011年3月11日のあの日、我が家ではこんなことがありました。
強烈な揺れが納まった直後、ラジオの乾電池がない、と気がついた私は、当時中学生だった息子に「コンビニ行って電池をいっぱい買ってきてくれ」と頼みました。

しかし、コンビニから戻った息子は、最低限の電池しか買ってこなかった。

聞くと、「まだ少しあったけど、必要な分だけにした」

おもわず「なんだ、電池無くなるぞ、全部買ってくれば良かったじゃないか」と言ったわたしに、息子は声を荒げました。

「誰か他にも電池が必要な人がいるはずだろ!?」

言葉を返せませんでした。こどもたちにしゃあしゃあと道徳的なことを求めたり、ああだこうだと偉そうに言ってきた自分のなんてぶさまなことよ。

「そうだよな、おまえ、正しい。」

そう口にした自分の恥ずかしさが、いまだに忘れられません。

 

今、藤崎デパート・グリーンルームで開催予定の311メモリアル企画『森羅万象のつらなり【海から銀河まで】(3月7日から11日)』の最後の準備に追われています。

展示作品の三陸風景画の額装をチェックしたり、描いた当時のことを思い出しながらキャプションを書いたり。

だからでしょう。2011年の3月11日、電気もつかず薄暗くなった部屋の中で、買ってきた乾電池を差し出しながら「ほかにも誰か必要としている人がいるだろ!?」と言った息子の言葉を、つい思い出しています。

311メモリアル企画『森羅万象のつらなり【海から銀河まで】(3月7日から11日)』の特別企画だったメモリアルメッセージコンサート(3/7.8)は、残念ながらそんな世相で中止となりました。ですが、展示は普通に開催します。

この企画展も「誰か必要な人がいる」と絶対的に信じています。

絵は藤崎会場に展示する震災前の三陸風景です。タイトルは「リアスの記憶・冬のかもめ」

場所は岩手でした。
たくさんの港をまわったので、地名は思い出せません。
たそがれ時の鳥居に海鳥が集まっていました。

石割桜_岩手風景水彩画 size34×46.5㎝

皆、だれでもがオリジナルヒストリーを持っています。
それは、数えきれないストーリーの連なりです。
私が描く絵も、一枚一枚その裏側にはさまざまなストーリーが存在します。

今回アップした絵は、スコットランドのスターリング近郊を描いた一枚ですが、そのバックストーリーを少しばかり紹介しましょう。(トップ絵は、ブログ最下部掲載の絵全体のトリミングヴァージョン)

スコットランドは初めて汽車から降り立った瞬間、「懐かしい」と思った不思議な国です。
かの国のもつ歴史が、私の生まれ育った東北と似ていたこともあると思います。
スコットランドは,その昔イングランドから抑圧され、みちのく東北も大和朝廷から「蝦夷(えみし)」と蔑まされていた時代がありました。(北海道の蝦夷(えぞ)とはちょっと違います)
そんな抑圧された歴史の共通点もあり、何度かスコットランドを旅しました。

この絵を描いたときは、スコットランドとイングランドが戦った古戦場を巡ることも、隠れたテーマのひとつでした。
スターリングはスコットランドとイングランドの戦いがくりひろげられた地でもあります。
スターリングブリッジの戦い(1297年)や、バノックバーンの戦い(1314年)です。

レンタカーで辿り着いたスターリングでしたが、適当に見つけたB&Bに投宿。宿の主人に「バノックバーンに行きたいんだ」と告げると、うれしそうに道を教えてくれました。

さて、翌日出発しようとイグニッションキーをひねると、うんともすんともいいません。
バッテリーあがりです。
前日は深い霧でした。私はライトつけっぱなしのままイグニッションを切ってしまったのでした。

宿の主人が「バノックバーンは特別なところだからね。そうそう簡単にはいけないのさ。」とウィンク。「せっかく日本からきてくれたんだ。なんとしても行ってもらわないとね」と、自家用車を横付けしてケーブルをバッテリーに繋いでくれました。

クルマを動かすことができて、ようやくバノックバーン平原に辿り着きました。しかしバッテリー上がりから復帰して数十分しか走っていません。
クルマのエンジンを止める勇気はなかったので、平原のぎりぎりまでクルマを寄せました。エンジンはもちろんかけっぱなしです。

そのままクルマを離れるのは無謀、と、ボンネットの前に小さな携帯椅子をおき、クロッキーをしました。エンジンの熱が背中に伝わってきたのを覚えています。

聞こえるのは、borough.borough.boroughと響くエンジン音と、小鳥のさえずりだけ。

そんなのどかな風景でしたが、風景の向こうから私にせまってきたのは、スコットランドの英雄達の幻影だったように思えます。

絵のタイトルは「英傑の地-ウィリアムウォレスの旅路」です。

スターリングブリッジも私は取材しています。その時もウィンクしたくなる出来事がありました。そのお話や東北蝦夷の地ロケハンの旅話はまた別の機会に。。。

この景色はいままでヴァージョンを変えて何枚か描いています。それだけ好きな風景です。が、その度思い出すのは、宿の主人のいたずらっぽいウィンクなのです。

一枚の絵が嫁ぎました。
帆船エンデュアランス号を描いた水彩画です。
エンデュァランスは、探検家のアーネストシャクルトンが乗っていた船です。
トップ写真はお客様のご自宅にかけられた様子です。
「キッチンから一番よく見える場所にかけました」とお客様からメールをいただきました。茅ヶ崎市にお住まいの方です。

100年以上前、南極探検で遭難し困難を乗り越えたシャクルトンの体験は何冊の本にもなっているのでご存知の方も多いと思います。

彼の想像を絶する体験談からは、自分も、大きなパワーをもらえました。

彼の船を描いた理由の一つは、シャクルトンからもらった前進力へのをサンクスを、絵を通して誰かにフィードバックしたかったから、です。

探検の超簡易版?が「旅」だとすると、「旅」は次々プレゼントがやってくる至極の体験です。
もっともそれに気がつけば、の話ですが。
というのも、プレゼントはトラブルというカタチでやってくるのです、大方は。

アニメーターだった20代、仕事漬けの徹夜のラジオの向こうで「若き日に旅をせずして老いてのち何をば語る」と誰がが言っていました。

しかし、当時の自分は「仕事缶詰」。
ピンとも来なかったし、「休みはない、金もない。アパートにさえ帰れない。旅になんて出れるわけないじゃないか」と完全に否定派でした。

そんな「缶詰アニメーター」をやっているうちに、その言葉は小骨のように心の喉に引っかかり、数年後に退社。今の妻と二人、リュックを背負って小さな旅に出ることになる。
(旅資金もなかったので、路銀は銀行から借りた三年返済フリーローンでした)

その旅が気づかせてくれたのは、トラブルとそれに対する助けが、まるで心電図の波長形のようにリズミカルにやってくる、ということ。
日常、日々という「旅」においてもそれは同じ。
なかなか達観はできないけれど、日々を生きるって、旅と一緒。
トラブルはゴール=光を目指すため、神様が「ほら」と置いてくれる一里塚みたいなものなのでしょう。

あと数年で、自分は世間的に還暦なる歳を迎えます。
アニメーターからはじまって、挿絵を描いたりポスターの絵柄を手掛けたり、法廷画を依頼されたり、水彩画を買ってもらったり。
振り返ると描くことだけで生きてきました。

しかし「画家、アーティストとして生きてきた」という感覚は、全くありません。
「日々を描くことで乗り越えてきた」
ただそんな感覚。

世間で言えば定年に近づいてきて、ようやくこう思えます。
「もし神様がいるとすれば、神様が自分が与えたのは「見聞きしたものを描け」ということなんだ」

この先さらに、いままでの旅を通して気づかせてくれた「神様のプレゼント」を、様々な絵に、色彩に変え、構図に変え、封じ込めていきたいと思っています。
あらためて自分の「お楽しみはこれからだ」と思っています。

ラジオの向こうに聞いた「若き日に旅をせずして老いてのち何をば語る」。期せずして今、その重みを手のひらに受け止めることができています。
シャクルトンのエンデュァランスの絵は、そんな思いも込めながら描いた一枚でした。
ありがとうございました。

最後に紹介する水彩画は英国海軍巡洋艦フッド。

ビスマルクに轟沈させられた艦(フネ)です。
絵の向こうには消えて行った乗組員の数だけいくつもの物語がつまっています。 「HMS.HOOD」画寸23センチ×7センチ ¥41.800(税込)

フリーランスのイラストレーターが愛すべきことは、なんだろう?

答えはいくつもありますが、大事なひとつは、その人その人がそれぞれに重ね培ってきた自分の経験なのかな、とも思います。

以前、経営コンサルタントと契約したことがありました。今から思えば、道に迷っていたのだと思います。

コンサル氏は大きな会社を立て直す実力派の方だったので、それは考えのスケールが違いすぎました。残念ながら「制作から納品までを自分がこなす。場合によっては企画も」という仕事に対する肌感覚がすりあわず、結果一年ほどで契約にピリオドを打ちました。

しかし、得たことも多かったのは事実です。「世間のビジネスはそんな考え方で渡り合うんだ」と、「ビジネス最前線の丁々発止」を教えていただいたのは、最高のメリットでありました。
「フリーランスはそう(どう?…笑)見られているんだ」ということをリアルに感じたのも、得たことのひとつです。

そんな体験を経て、思ったのは、コンサル氏はコンサル氏の経験の積みかさねで独自の意見を作り上げるということ。
翻ってフリーランスを見た場合も結果同じです。自身にしかできない仕事体験を積み上げてきたから、フリーランスで食べて行けています。

自分の積み上げた経験に自信を持つ、そして愛する。これがフリーランスビジネスの核のひとつのように思えるのです。
世間に愛するものをたたき売りする人はいません。たぶん。

そう思えるようになったのは、コンサル氏とのなにげない会話からこぼれおちた言葉のあれこれをすくい取っていたから。今は貴重な心の支えのひとつになっています。

閑話休題。

せんだい311メモリアル交流館(地下鉄東西線荒井駅舎内)で2月22日からはじまる企画展『震災の事実×心の真実~世界がすこやかであるために』にイラストレーション制作で協力させていただきました。

東日本大震災時の保険師の活動にスポットをあてた企画展です。

震災時の保険師の活動を聞き描きし、イラスト化しました。館内設置パネルに使用されます。

この仕事が入った理由は、「写真データが無い震災当時の状況を、当事者からの話をきき、的確に臨場感をあわせて、優しいトーンでイラスト化する」ことができるスキルが求められました。

「言語で聞いた状況を、脳内で様々なアングルに作り上げる」

「解説しつつ、当時の状況がわかるように演出する」

「優しさを、色合いと人物表現に反映させる」

今回のイラストレーションには、過去の仕事で積み上げてきた愛すべき体験を反映させることができました。
本日チラシが届きましたので、ご紹介します。

2/22~6/28と会期は長いです。ぜひ足をお運びください。

絵をてがけた「海の見える丘・絵本版」の書評が河北新報朝刊に載りました。
「東北の本棚」のコーナーです。
出版社の「星の環会」に問い合わせたところ、紀伊国屋書店仙台店には既に配本済みとのこと。
また、各書店でも注文後すぐに配本してもらえるように手配済みとのことでした。

紙面をアップしましたのでどうぞご一読ください。

掲載になった日の9日そして10日と東京に展覧会を見に行ってきました。
都美術館に「ハマスホイとデンマークの絵画展」・都現代美術館に「ミナペルホネン/皆川明 つづく」・庭園美術館「ルネ・ラリック展」の三つをみましたが、旅費交通費をかけていった価値はありました。
絵本の版元「星の環会」にもご挨拶して仙台に戻ってきたら、なんと雪。ちょっとびっくりでした。

展覧会と出版社訪問が今回の上京の目的だったのですが、一泊二日の東京で一番印象に残ったのは、実は宿泊先のホテル朝食会場でみかけた「厚焼き卵を焼く料理人」でした。

「焼く様」があまりにも丁寧で真摯で、強烈に印象に残ったのです。「清らかさ」といってもいい。
もうすぐ焼き上がるところへ「おいしそうですね」と声をかけると
「ひとまわりしていらしてください。ちょうどできあがっていますから」と笑顔で料理人が答えました。

彼女(30〜40代と思われる女性でした。)のこれから歩む道が、そのひたすら仕事に向かう姿勢から見えたように感じました。
彼女の仕事ぶりが清らかさを伴っている姿は、絶対にラッキーな仕事のめぐりあわせを招いて、未来へのいい道筋を切り開いて行くんだろうな。

どんな仕事であっても、誰かがどこかで見ている、とはよくいわれることです。
しかし、「仕事ぶり」が放つ「清らかさ」って、考えたことも無かった。
はたして自分はそんなふうな仕事ぶりをしているのだろうか?

今回の東京への旅の一番の収穫、それは、「仕事で清らかな空気を放てるか??」

仙台に戻ってきた今も、料理人の仕事ぶりを思い出すと、清々しくなるのです。
こうやってブログで「出たよ!」「やったよ!」「描いたよ!」とばらまいているようじゃ、清らか、には遥かほど遠い…な

最後に訪れた庭園美術館には、そんな自分をくすくす笑うように、梅の花が咲いていました。

トップ絵と下の水彩画は昨年描いた梅の花です/6.5センチ×6.5センチ=藤色バックは合成(嗚呼、また笑われた)




 

 

革新的なデジタル水彩ソフト(アプリ)「Rebelle3」を開発しているescape motions=エスケープモーションズ社が、10人の水彩アーティストとして、私=古山拓の作品を紹介しました。サイトescape motionsはこちらです。

以下は、エスケープモーションズ社がアーティストとしての私を紹介してくれた文です。

Japanese master painter and owner of his gallery focuses on traditional landscape paintings but is not afraid of experimenting with the digital medium. His art depicts both urban and rural sceneries showing his great taste and years of experience.

翻訳

「日本の画家であり、自身のギャラリーのオーナーでもある彼は、伝統的な風景画に焦点を当てていますが、デジタルメディアを試すことを恐れていません。彼の描く都市と農村の両方の風景には彼の素晴らしい味と長年の経験を見ることができます。」 

…なんとありがたいメッセージでしょうか。

今回取り上げられた作品は、山形の山寺・立石寺を「Rebelle3」を用いてペンタブレットで描いた作品でした。

私にとっては「絵筆と絵の具」も「デジタルアプリ」も、ともに表現のための「画材」です。

立石寺の絵はスペックの低いパソコンで描いた作品でしたが、1月に高スペックマシンを導入、「Rebelle3」をインストールしました。今まさに、私の新しいデジタル水彩ペインティングのスタートラインに立ったところです。

これからも「Rebelle3」の持っている様々な可能性を武器に、新たな作品制作に表現してみたいと思います。

今回ピックアップしてくれたescape motionsに、深く感謝申し上げます。