2020-02-24
皆、だれでもがオリジナルヒストリーを持っています。
それは、数えきれないストーリーの連なりです。
私が描く絵も、一枚一枚その裏側にはさまざまなストーリーが存在します。
今回アップした絵は、スコットランドのスターリング近郊を描いた一枚ですが、そのバックストーリーを少しばかり紹介しましょう。(トップ絵は、ブログ最下部掲載の絵全体のトリミングヴァージョン)
スコットランドは初めて汽車から降り立った瞬間、「懐かしい」と思った不思議な国です。
かの国のもつ歴史が、私の生まれ育った東北と似ていたこともあると思います。
スコットランドは,その昔イングランドから抑圧され、みちのく東北も大和朝廷から「蝦夷(えみし)」と蔑まされていた時代がありました。(北海道の蝦夷(えぞ)とはちょっと違います)
そんな抑圧された歴史の共通点もあり、何度かスコットランドを旅しました。
この絵を描いたときは、スコットランドとイングランドが戦った古戦場を巡ることも、隠れたテーマのひとつでした。
スターリングはスコットランドとイングランドの戦いがくりひろげられた地でもあります。
スターリングブリッジの戦い(1297年)や、バノックバーンの戦い(1314年)です。
レンタカーで辿り着いたスターリングでしたが、適当に見つけたB&Bに投宿。宿の主人に「バノックバーンに行きたいんだ」と告げると、うれしそうに道を教えてくれました。
さて、翌日出発しようとイグニッションキーをひねると、うんともすんともいいません。
バッテリーあがりです。
前日は深い霧でした。私はライトつけっぱなしのままイグニッションを切ってしまったのでした。
宿の主人が「バノックバーンは特別なところだからね。そうそう簡単にはいけないのさ。」とウィンク。「せっかく日本からきてくれたんだ。なんとしても行ってもらわないとね」と、自家用車を横付けしてケーブルをバッテリーに繋いでくれました。
クルマを動かすことができて、ようやくバノックバーン平原に辿り着きました。しかしバッテリー上がりから復帰して数十分しか走っていません。
クルマのエンジンを止める勇気はなかったので、平原のぎりぎりまでクルマを寄せました。エンジンはもちろんかけっぱなしです。
そのままクルマを離れるのは無謀、と、ボンネットの前に小さな携帯椅子をおき、クロッキーをしました。エンジンの熱が背中に伝わってきたのを覚えています。
聞こえるのは、borough.borough.boroughと響くエンジン音と、小鳥のさえずりだけ。
そんなのどかな風景でしたが、風景の向こうから私にせまってきたのは、スコットランドの英雄達の幻影だったように思えます。
絵のタイトルは「英傑の地-ウィリアムウォレスの旅路」です。
スターリングブリッジも私は取材しています。その時もウィンクしたくなる出来事がありました。そのお話や東北蝦夷の地ロケハンの旅話はまた別の機会に。。。
この景色はいままでヴァージョンを変えて何枚か描いています。それだけ好きな風景です。が、その度思い出すのは、宿の主人のいたずらっぽいウィンクなのです。。