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#古山拓

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森羅万象、神様、宇宙、大いなるもの、、、どんな言い方でもいいのだけれど、昔から人々はそんな全てを司る力を知っていて、それぞれの文化のありかたで働きかけてきたと思います。

私が興味をひかれる文化に古代ケルト文化がありますが、その文化圏でも森羅万象に力が宿り、Faeries=妖精がいきいきと描かれています。

以前、ケルト文化の色濃いアイルランドを旅したときに妖精の画集を買ってきました。妖精といっても、かわいらしいものではなく結構怖い。小さなブラウニーなんて名前こそ可愛らしいですが、それだって実際目の前に現れたら、ひきます、きっと。同じケルト文化圏のフランスブルターニュ地方のあれこれを書いた本でも,似たような興味深い記述がありました。そこには大いなる力への畏怖があるように思えます。

ひるがえって自分が暮らす日本の祭りや伝承芸能を見ると、やはりおおいなる力への畏敬の念や感謝がかたちになっているように思えます。

ふるさとである岩手に鹿踊りという伝統芸能があります。(宮沢賢治も「鹿踊りのはじまり」という物語で鹿踊りのことにふれています。青空文庫で読めます→こちら)この踊りの衣装を見ると、ケルトの妖精達を思い出してしまうのです。動物と人間がひとつになっているような、そんな不思議なデザイン。(実際に目の前で鹿踊りの衣装をまとった踊り手を見ると、その大きな存在感に圧倒されます。)

いつも鹿踊りのデザインを見るたびに、人は大いなる力と常に繋がっている、、、という想いが拭えませんでした。

今日アップした絵はその鹿踊りへの想いを描いた一枚「faeries_鹿踊り」です。

 

 

宮沢賢治が当時聴いたであろう音源を集めたCD「心象スケッチ『春と修羅』〜宮沢賢治が聴いたクラシック〜」の制作にイラストレーションとデザインで関わりました。今月下旬に完成です。

制作は岩手出身仙台在住の音楽プロデューサー佐々木孝夫さんです。昨年関わった宮沢賢治CD「ジャズ夏の話です」に続いて、宮沢賢治の聴いた(であろう)当時音源シリーズ第二弾です。今回はクラシックを中心に小品15曲が収録されています。

15日付の岩手日報で取り上げられました。私のことも触れてくださっています。(感謝!です)

CD取扱いは、以下です。

花巻/宮沢賢治イーハトーブ館・林風舎

盛岡/もりおか啄木・賢治青春館

仙台ではジャズミーブルースノラ(孝夫さんの経営するライブハウス)・アトリエアルティオ(当ギャラリー)

CDに関するお問い合わせはジャズミーブルース・ノラ 022-398-6088まで、お電話でどうぞ。

CD発売を記念して、岩手盛岡/もりおか啄木・賢治青春館1階喫茶コーナーでイベントがあります。

蓄音機でSPレコードを聴く「賢治が出会った音楽」です。要予約で先着20名様。参加費500円(コーヒー付き)参加予約は019-604-8900まで。

 

 

 

 

あの日から7年後の311企画。「海画展」はそんな想いで企画した展示です。
明日、その3月11日を迎えます。トップ絵は震災前の気仙沼。港の対岸、造船所がありました。そのあたり。

「海の物語から描く」
「船を描く」
「震災前のスケッチから描く」
と三つのテーマで3ヶ月のロングラン展覧会にチャレンジしてきました。

あらためて思ったことは、「海を描く」ということは、「海に関わる海以外のもの」を描く、ということでもあるのです。
なんだか、光を描こうとするときに、自ずと影を描かなければならないということに通じるな、、、なんて常に思いながらの制作でした。

正直に言います。いろいろな事情が重なり、今回ほど気持ちが大変な展覧会はありませんでした。興行成績的には成功とは言いがたい数字でしょう。はっきり言えば持ち出しばかりの赤字興行です。
だけど、明日3月11日を目前にして、やった意義はおおいにあった、と思いたい。
なぜなら、この企画をもって私の中では海と震災に一区切りつけることができたから。

何を得たか?
それは数年経ってわかること。今はなにもわかりません。
いえることは,我流絵描き・イラストレーターとして這ってきた自分にしかできない表現をしたということ。

昨晩、企画の屋台骨のひとつ、シンガーソングライター「苫米地サトロライブ」が素敵なかたちで終わりました。
友人である彼の大好きな歌に「青空」があります。
彼が震災の応援ソングとして作った歌です。
昨日の彼の歌とリズムを刻むステップには、鬼気迫るものがありました。

その歌詞から引用で、明日にたむけたいとおもいます。

  *  *  *
泣きながら行け 泣かないって決めるな
迷いながら行け 泣かないって決めるな
震えながら行け 泣かないって決めるな
泣きながら行け 泣きながら行け 泣きながら行こうぜ
逃げないって決めたなら

サトロ君、ありがとう。

荒れている海は、きらめく海以上に立ち止まってしまう。

この水彩画「雪風」の元になったスケッチ素描は岩手のリアスの海辺であることは確かだけれど、どこだったかいまとなってはわからない。

憶えているのは、強風が吹きすさんでいた、ということ、そして風にあがなうようにカモメ達が空に舞っていたということだ。雪は決してふっていなかった。私の場合、素描を元に風景画を描き始めると、心の中では雪が舞い、時間が夕刻へと近づき、漁村に光がともってくれていた。絵描きはことほどさようにウソをつく。

美しい海辺ももちろん魅力だけれど、荒海にあがなうように暮らし続けた漁村の体温もまた愛おしいのだ。こんな漁村が三陸にはいくつもあった。それが根こそぎ失われた2011年3月11日。そのことが時間が経つほどにくやしいので、アルティオで発表する。

決して上手い絵でも美しい絵でもないことは百も承知だ。でもそれが、イラストレーターと画家、この両方を行き来して「描くことで食う」という路上生活者スレスレの生き方を決めた自分を支えてくれている、多くのクライアントや嫁がせていただいたお客様への矜持だともおもっている。

NHK仙台放送局が掲げている、「震災伝承プロジェクト〜ふるさと未来への記憶」第二期展示が局の一階エントランススペースではじまりました。
取材をうけた私のクリップも流れています。ぜひごらんください。

 

 

今日のフネ図鑑展からのフネ紹介は、マルタの漁船です。
地中海のヘソあるマルタ共和国。いくつかの小島からなる国です。十字軍が遠征していたその昔、十字軍の本拠地だったこともあるようで、歴史的、地理的な要因もあるのでしょう。固有の文化をもっています。

フネのかたちも独特です。ヘサキとトモはすとんと垂直、そしてカラーリングが独特なのです。青、赤、黄色で目が覚めるよう。独特なのは小さな漁船でも舳先に目が描かれていること。

これは、フェニキア人が昔から守護神としてあがめていた「オシリスの目」ということです。古代エジプトの神様の一人ですね。先日紹介した古代ギリシャの軍船の舳先にも描かれています。地中海世界の航海の守り神だったのでしょう。

旅先でオシリスの目を見たときにまっさきに思い浮かんだのが古代ギリシアの三段櫂船でした。二千年余たっても、自然に糧をもとめる人々の自然への畏怖の念は変わらない、ということですね。

展示中のマルタの漁船の絵は二点ありますが、今日はリヤビューからの一点をアップします。トップにサムネイル表示されている絵は、2005年頃の個展で発表したマルタの港の風景でした。

 

今日は青葉アートスクールの冬季講座、岩手の雪景色を描いてもらいました。水彩で雪を描くということは、紙の白地を残すということです。影の色はグレイではなくあちこちの色が反映している、と、実例ふまえて伝えましたが、みなさん、わかってくださったようでうれしかったです。

さて、アルティオ展示継続中の「フネ図鑑」から今日は水彩で描いた「ブルターニュのヨット」です。

彼女(フネは女性名詞です)と出会ったのは、フランスブルターニュ半島の小さな港町でした。カンペールから路線バスを乗り継いで1時間弱くらいだったと思います。カンペールに宿を取ろうと思ったら、どこも満室。運良く部屋を予約できた町が、港町ラフォーレフーナンでした。

港には小さな漁船やヨットがもやわれていましたが、目を引いたのはそのペインティングの色合いです。

描いたヨットに使われていた色は、パープル(!)にグリーン(!!)ですよ…。この「反対色」をみごとに塗り分けるフランス・ブルターニュ人のセンスに脱帽でした。

ちなみに使っている透明水彩絵の具は、フランスのセヌリエ(Sennerier)。保湿力が高さが、私の描き方(混色)にちょうどいいのです。

作品サイズ11㎝×23.5㎝ ¥37500(税込)

 

ところでブルターニュはケルト文化の薫り高い地方です。
私のブルターニュ旅は、好きなケルト文化の薫りを求めて、の旅でした。

流れ行き着いたラフォーレフーナンでは、とんでもないサプライズがまっていたのです。

宿も取れず意気消沈した私たち(妻と子供同行のバックパックの旅でした)が、名も知らぬ町に流れ着いたその日、町の広場で偶然「ケルト音楽祭」が開催されていたのでした。
神様は行くべきところへ導いてくれるのだ、と、確信をもった日でした。

アルティオの語源は古代ケルト語で「クマの女神」です。仙台でケルト語を店名に使っているショップは、ごくごく少数、あっても数えるほどかと思います。ブルターニュケルトの「旅の導き」をお客様にバトンリレーできればいいな、と思っています。

 

今日からアルティオ斜め向かいのギャラリー喫茶・ガレで展示がスタートしました。
東北の海辺を描いた水彩風景展です。青森、秋田、岩手、宮城、山形。そして福島と東北六県をカバーしました。小さな漁村ほど絵になるのは港スケッチの定石です。
もちろん港でなくとも、漁師達が暮らす浜の風景は、「潮風が風景を美しく仕立ててくれている」ので、それだけで絵になります.

山形、秋田の海辺の集落はなかなかどうして、ついクルマのハンドルを切ってしまうのです。ここ十年ほど潮風まかせにハンドル切り続けた、そんな結果発表でもあります。

さて、同時進行でアルティオ開催中のフネ図鑑より、今日は古代ギリシャの三段櫂船の紹介です。

その昔、古代地中海世界ギリシャにアテネとスパルタが二大都市国家として君臨していました。そんなところへ東方から強大な帝国ペルシャが攻めてきます。アテネスパルタはまったく違った性格の都市国家でしたが、ペルシャが都市国家を次々落として迫り来る危機の前、主義が違うなんて言っていられない。そんなわけで、連合してペルシャと戦います。

映画になった「300」は、ペルシャ戦争のテルモピュライの戦いを描いた作品でした。主役はスパルタでした。陸軍として強いのがスパルタ、それに対して、海軍力が高かったのがアテネでした。
サラミスの海戦で名将テミストクレスが率いたギリシャ連合海軍が勝利、ペルシャ戦争が転換します。
海戦で使われた船が、三段櫂船。都市国家の低い地位の市民がオールを漕ぎ、貴族は重装歩兵として敵と刃を交えるのです。
船首に突き出た衝角を敵船の横腹にぶつけ沈める。あるいは敵船に乗り込んで白兵戦…という戦い方だったようです。

ちなみにノブレス・オブリージュという、地位に基づいた責任を果たす、というヨーロッパの貴族道徳がありますが、ルーツは古代地中海世界にあります。高貴な位の家出身の兵は、敵に一番近いところに自ら位置を取りました。高位の重装歩兵ほど戦死率が高かったといいます。

ちなみに私の学生時代の専攻は古代地中海世界の歴史でした。そんなわけでこの絵は、当時から描いてみたいな、と思っていた船なのでした。 

作品サイズ27㎝×14㎝ ¥48,600(税込)

国内なのに異国の感覚をもらえる場所ってあります。青森はそのひとつです。

本州の一番てっぺん、青森県の左側の北海道に向かって延びる半島が津軽半島ですが、以前、太宰治の小説「津軽」の舞台を描こうと旅したことがありました。津軽取材は3度目でしたが、半島の沿岸部をトレースしたのはその旅がはじめてでした。

ルートは弘前から陸奥湾に向かって北東に向かい海沿いに出ます。そのあとはひたすら海岸線に沿って北上しました。いくつもの小さな漁村があります。岩手出身宮城在住の私にとっては、「海」というとリアスの海が刷り込まれていますが、津軽の漁村は趣を異にしていました。

この絵は今別で描いた一枚です。

今別は過疎が大きな問題になっていると聞きました。しかし私にとってはスケッチのモチーフとしてはいたるところに画題がごろごろある魅力的な町でした。不思議と感じる空気感が、異国のそれ。言葉ではうまく言い表せないけど。「みつけた!」感が全開になるところです。

今週金曜日から、アトリエアルティオ斜め向かいにある、カフェ&ギャラリーガレで「みちのく海景」と題した展示がスタートします。ただいまアルティオならびに近所のカフェトムテさん、バレアリックコーヒーロースターさん一番町開国屋さんで開催中の『海画展』のワンクールです。
ガレでは、福島、宮城、岩手、青森、秋田、山形と東北六県の海辺を水彩で描いた風景画を展示します。
アルティオで開催中の「古山拓のフネ図鑑」展示とあわせて、ランチしがてらご覧いただければ幸いです。

 

 

「古山拓のフネ図鑑」展のポスター紹介です。

こうして見ると、自分はその時その時で描きたいように描いているんだな、と、あらためて思います。
まったく意識はしていないのですが。。。(苦笑)

明日の祝日もアルティオはオープンします。

と、気づいたら、仙台の外は雪景色になっていました。

どうやら静かな一日になりそうです。